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2021年4月1日より総額表示が義務化になった場合の対応方法

その他

更新日:2023.04.06
公開日:2021.03.11

2019年10月1日から、消費税率が10%に引き上がりました。同時にスーパーの一般食料品や飲料など指定の商品は税率が8%に据え置かれる軽減税率が施行されたのもポイントです。巷では8%と10%の商品が混在し消費者の混乱を招いています。

 

また税率の変化に伴い、税抜き表示で価格を表示する店舗と税込みで表示する店舗がばらけてしまったのも問題です。消費者側では会計の際に不便が生じる原因になっています。

 

しかし消費税については「総額表示義務化」が行われることになりました。実店舗だけでなくECサイト運営者など課税事業者はすべて対象となるため注意が必要です。

 

今回は対応が必要な事業者様向けに政府が行う消費税の総額表示義務化の内容、そして開始タイミングや適用に関するポイント、対策方法などをご紹介していきます。

 

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消費税の総額表示義務とは?

2021年4月1日より総額表示が義務化になった場合の対応方法

 

消費税の総額表示義務とは、消費者が購入のときに確認する商品の値段について税込表示(総額)の表記を定める決まりです。

 

総額表示義務化は、最近制定された法律ではありません。2004年時点ですでに制定されていたものです。しかし消費増税に関して事業者の事務負担が増えるのを恐れ、特例を作る形で実行が延期されていました。

 

つまり今回の消費税の総額表示義務化は新たに政府が定めたものではなく、「以前から制定されていた法律が特例の期限切れにより復活して適用される」という言い方が正しいです。消費税率が8%になってから事業を始めた方は今回のいきさつを詳しく知らないかもしれないので、いちおう頭に入れておきましょう。

 

 

開始時期は2021年4月1日から!総額表示義務対象の事業者

2021年4月1日より総額表示が義務化になった場合の対応方法

 

消費税の総額表示義務が適用されるのは、2021年4月1日からです。これは「消費税転嫁対策特別措置法」という法律が関係しています。

 

消費税転嫁対策特別措置法では消費税の適切な転嫁などを行うため、事業者に対して価格表示の特例を定めた法律です。具体的には「税抜」といった表記で商品の表示価格が税込だと誤認させない何かしらの対策を行っていれば、税込の値段を直接表記しなくてもよいという内容になっています。消費税が5%から8%になる過渡期であった2013年10月1日から施行されました。

 

ただし消費税転嫁対策特別措置法の期限は2021年3月31日までです。つまり期限が切れるとともに総額表示義務化が適用され、事業者は一律に税込み価格を各媒体へ表示する必要が出てきます。

 

総額表示義務化の対象事業者は、消費者を相手に取引を行っている消費税の課税事業者すべてです。業種は問わず、商品に対して価格表示をしていれば対象になってしまう点が注意点になります。当然コロナ禍で現在参入企業が増加しているECも対象です。

 

 

ちなみに総額表示を必要としない事業者でも、事務的な負担を避けながら総額表示に対応するように政府が推奨を行っています。

 

 

消費税の総額表示義務を実施する理由

2021年4月1日より総額表示が義務化になった場合の対応方法

 

消費税の総額表示義務は、消費者の利便性向上のために行われます。税抜と税込の価格が混ざって表示されている現状は消費者にとって優しくありません。

 

たとえば税抜350円の牛肉、そして税抜200円のトイレットペーパーを購入したとします。税抜価格では550円と簡単に計算ができますが、実際に払う金額は消費税込みの金額です。この場合は牛肉が8%対象で28円、トイレットペーパーが10%対象で20円の消費税が掛かります。よって合計額は550円+48円で598円です。

 

今回の事例は商品が2点だけだったのでまだ計算がしやすいですが、商品の購入点数が増えれば増えるほど計算の難易度は上がります。また8%と10%が混在している状況だとどちらかに税率がまとめられているよりさらに計算がややこしくなってしまうのもネックです。

 

また別の店舗同士で商品価格を比較する際も表記の違いが邪魔をしてきます。

 

たとえばAの店舗では300円の商品がそのまま税抜表示、Bの店舗では300円の商品が税込表記330円で販売されているとします。Aの店舗が安く見えますが実態は同じ商品なので税率も変わりません。どちらも330円で購入する必要があるのが注意点です。商品を別店舗で比較する際に税表記を考えず、間違って購入した方も多いのではないでしょうか。

 

総額表示が義務化されてすべての商品価格提示が消費税込で統一された場合、計算は一気に楽になります。商品同士の価格を足すだけで合計金額がすぐ分かりますし、店舗同士で比較する際も商品の値段にずれが出ません。シンプルに計算ができる総額表示は消費者ファーストの税提示方法だと言えます。

 

 

消費者が購入時目に入るものはすべて対象!総額表示の対象媒体とは

2021年4月1日より総額表示が義務化になった場合の対応方法

 

消費税の総額表示義務化では、次のような消費者が購入時参考にする価格表記を行っている媒体はすべて対象です。

 

  • ・販売価格を提示している値札や商品パッケージなど
  • ・店内や陳列棚などで販売価格を提示している
  • ・商品カタログ内の価格表示
  • ・ECサイト内の価格表示
  • ・折込やDMなどで発信するチラシ内の価格表示
  • ・オフライン、オンラインを問わずあらゆる有料広告での価格表示
  • ・飲食店内メニューやポスターにおける料理やドリンクなどの価格表示
  • ・看板といった屋外広告での価格表示

 

総額表示を行っていない媒体が1つでもあると、法律違反になってしまうので注意してください。複数の媒体で価格表示を行っている事業者ほど対応の手間が増えてしまうので、準備ができていない場合急いでください。

 

 

自分に合った方法はどれ?総額表示義務に対応した価格表示の表記方法

2021年4月1日より総額表示が義務化になった場合の対応方法

 

ここからは総額表示義務に対応した価格表示の表記方法を解説していきます。

 

税込価格のみを記載

「1,100円」というように、税込価格のみを記載していく方法です。消費者にとっては税込価格だけをシンプルに理解できるメリットがあります。

 

 

税込と表記を追加する

「1,100円(税込)」というように、税込価格であると追記する方法です。

 

総額表示義務化が実施された後も、「この商品が税込か税抜なのか分からない」と混乱される方はいらっしゃるはずです。しかし税込と追記しておくだけですぐ税込価格と理解できるので、消費者にとっては優しい表示方法となります。

 

そこまでパソコンやスマホの画面スペースを取らない表記方法なので、ECサイトでも活用していけるでしょう。

 

 

税込価格を表示後、税抜価格を付け足す

「1,100円(税抜価格1,000円)」というように、税込価格を表示した後に税抜価格を付け足す方法です。

 

税込価格だけを把握できれば実際に支払う金額の計算は可能です。ただしポイントサービスの還元を受けたい場合は税抜に対して加算される場合があるので、消費者としては税抜価格での計算も行っておきたい場合があります。

 

ポイントサービスで集客を行っているような店舗は、税抜価格もいっしょに記載したほうがユーザーにとって利便性の高い価格表示を実現できる可能性があります。

 

 

税込価格を表示後、消費税額を追記する

「1,100円(うち消費税額等100円)」というように、税込価格を表示した後に消費税がどれだけ内訳を占めているのか表示する方法です。

 

ポイントサービスを提供している場合は税抜価格が分かっているほうがシンプルに計算できるので、税込価格を表示後に税抜価格を付け足す方法のほうが消費者に好まれるかもしれません。消費者へ8%の税率か10%の税率、どちらを払っているか確認してほしい場合は使えるでしょう。

 

 

税込価格を表示後、税抜価格と消費税額の内訳を追記する

「1,100円(税抜価格1,000円、消費税額等100円)」というように税抜価格も、消費税額も総額といっしょに表記する方法です。

 

消費者としては自分が購入したい商品の本体価格および税額が一目で分かるメリットがあります。ただしECサイトの場合は表示できるスペースが限られている分、表記方法として使いにくいデメリットがあります。

 

 

税抜価格を表示後、税込価格を追記する

「1,000円(税込価格1,100円)」というように、税抜価格を表示した後に税込価格を追記する方法です。今でも多くのスーパーやコンビニで使われています。

 

商品本体の税別前の価格をアピールできますが、税込表記が小さいと誤認が起きてしまうかもしれません。このため税抜価格の近くに分かりやすい大きさで税込価格を記載する工夫が必要です。

 

 

希望小売価格は例外!税別表記が許可される事例

2021年4月1日より総額表示が義務化になった場合の対応方法

 

今回の消費税総額表示義務化は、あくまで消費者が商品の値段を分かりやすく把握して購入判断を行えるように行うものです。つまり対象はBtoCの取引であり、BtoBに関する取引は対象外です。

 

  • ・製造業者へ資材を販売する
  • ・製造業者が卸売業者へ商品を販売する

 

といった消費者が直接かかわらない範囲での取引は総額表示義務化が適用されません。これまでと同様の価格提示で取引を継続可能です。

 

また「希望小売価格」も総額表示義務化の対象外になっています。小売業者以外の製造業者や代理店などが、販売の参考にしてもらえるよう記載した価格のことです。つまり消費者ではなく小売店に見せるのが前提の価格なのでBtoBでの取引に関する記載に該当し、総額表示の義務は発生しません。

 

たとえば総額表示で価格を提示した後に購入が発生し、商品のパッケージに希望小売価格が記載されていたとします。当然希望小売価格通りに商品が取引されるとは限らず、そもそも消費者に見せるものではありません。ですからパッケージの希望小売価格の記載は変更せずにそのまま消費者へ発送してOKです。

 

ちなみに口頭での価格提示は税別でも構いません。ただし税込で言えるようにしたほうが顧客のためになります。

 

 

適用税率が1つだけではない!テイクアウトと店内飲食が同時に発生する業種の総額表示方法

2021年4月1日より総額表示が義務化になった場合の対応方法

 

今回の総額表示義務で注意してほしい業種は、テイクアウトと店内飲食が同時発生する飲食店などです。

 

軽減税率により、テイクアウトの料理お持ち帰りは8%の税率が適用されます。ただし店内で飲食を行うと軽減税率対象外になり通常税率10%が適用されるのがポイントです。

 

今までは税別で価格を表記して(テイクアウトと店内飲食で税率が異なります)と追記すれば済みましたが、総額表示義務の適用により通用しなくなります。

 

総額表示に対応した飲食系商品の価格表示方法には次の種類があります。

 

 

テイクアウトと飲食両方の税込価格を提示する

メニュー テイクアウト 店内飲食
牛丼 378円 385円

テイクアウトと店内飲食、それぞれの税率を計算して適用後の価格を別々に表示する方法です。上記の場合本体価格を350円に想定して、テイクアウト8%適用後の378円、店内飲食10%適用後の385円を記載しています。消費者としてはすぐテイクアウトと店内飲食、両方の価格が一目で分かるので楽です。ただし表記にスペースを取る点に注意です。

 

 

どちらか片方のみの税込価格を提示して注意書きを添える

牛丼 378円※店内飲食の場合別価格です

 

というようにテイクアウトと店内飲食どちらかの税率を適用後、注意書きでもう片方は別計算になると表記する方法です。

 

スペースを取らずに表記できるので紙面が限られている場合などに使えます。ただし片方の値段がはっきりわからないデメリットがあるので注意してください。

 

 

Web広告なども変更の必要あり!総額表示義務でEC事業者が取るべき対応

2021年4月1日より総額表示が義務化になった場合の対応方法

 

EC事業者の場合はシステムの表記を変更すれば一括で処理が行われるため、手作業で値段変更を行う必要も出てくる実店舗よりも総額表示義務への対応が楽かもしれません。ただし8%と10%の税率の商品を両方取り扱っている場合、表記を間違えないように注意する必要があるでしょう。

 

また次のようなメディアをECサイトと併用している場合、表記を変更する必要が出てきます。

 

 

自社の商品を紹介する記事

自社の商品を絡めてコンテンツマーケティングメディアを提供している場合、表記価格が総額表示義務をクリアしていない可能性があります。訂正ができれば早めに対象記事をピックアップして作業を行ってみてください。

 

 

フォローメール

顧客をフォローするため商品紹介などのメールを送っている場合も、メール本文に直書きしている商品価格が総額表示義務をクリアしている必要があります。自動化しているとついつい表記についておそろかになりがちなので、この機会に見直しましょう。

 

 

有料広告で商品のアピールをしている

有料広告で商品のアピールをしている場合も注意です。テキストや表示画像などの価格が総額表示になっていない可能性があるからです。

 

ECサイトのシステムを連携させて広告表示する場合は、価格をシステム上で一括管理できるので作業が楽になります。ただし連携していないデータに価格表記が混じっている場合は手動で別途訂正が必要です。

 

インターネットで広告を打っていると管理が甘くなりがちなので注意する

 

 

2021年4月1日以降、総額表示義務に違反した場合罰則はあるの?

2021年4月1日より総額表示が義務化になった場合の対応方法

 

事業者にとって心配なのが、法律変更に伴う違反した場合の罰則です。今回の総額表示義務化の復活に関しても、「違反した表示を行うと罰則を受けるのではないか」と戦々恐々としている方がいらっしゃると思います。

 

しかし総額表示義務化に関しては、今のところ明確な罰則はありません。たとえば「税抜価格のみを複数の商品で提示していた場合は、罰金として10万円を徴収する」といった決まりはないので万が一価格変更に抜け漏れがあっても店舗が大きなダメージを受ける事態は避けられます。

 

ただし罰則が決まっていないだけで義務であることには変わりありません。また悪質な事例が増加してしまうと消費者のために政府が動き、罰金や懲役などの罰則が追加されてしまう可能性はあります。

 

そもそも自分の事業者だけ総額表示に対応せずややこしい価格表示をしていては、結局消費者が商品を購入するのを渋り離脱する原因を作ってしまいます。マーケティング的にもよろしくないので余裕をもって早めに表記変更に対応してみてください。

 

 

まとめ

2021年4月1日より総額表示が義務化になった場合の対応方法

 

今回は政府が行う消費税の総額表示義務化の内容、そして開始タイミングや適用に関するポイント、対策方法などをご紹介してきました。

 

総額表示義務化が2021年4月1日を皮切りに復活します。税込価格を必ず消費者が購買の参考にする媒体へ記載しないといけないので、対象の事業者は注意しましょう。

 

またテイクアウト提供の飲食店やEC事業者などは、事業の特性を理解しながら今回の注意点を踏まえて価格の変更に対応してみてください。

 

 

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